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2017年8月 1日
全国大会観照記 宮城大会一日目

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毎年恒例となりました全国大会の照明にフォーカスした鑑賞記録。この夏ももちろん書きます。

まずは会場となっているイズミティ21大ホールの照明設備をチェックしておきましょう。
間口10間、奥行は約9間の、奥行きのあるホールです。ちなみに、昨年の全国大会の広島アステールプラザとほぼ同じ大きさです。
サスバトンは5本あって(1?4サスとプロセニアムサス)、美術バトンは13バトン。
シーリングも1シーリングと2シーリングがありました。

さて、ではまず一日目から。


■八千代高校「煙が目にしみる」
舞台前方のみをアクティングエリアとし、地明かりたるサスもその範囲で使用していました。前明かりはシーリングではなくフロントを多用していたのが特徴的でしょうか。
特殊な明かりとしては、センター奥に設置されたイチョウへのねらいのサスでしょう。イチョウを狙うことで、イチョウを美しく見せていました。また、そのイチョウのバックにパネルを置いてLHQ(ローホリとして使用するやつ)で染めていました。(LHQではなくストリップライトかなとも思いましたが、サイズ的にLHQでしょう。)イチョウの背景にある空を表現する手段として、背景をLHQで青に染めるという手ですね。ホリゾントを用いても同様の効果はねらえますが、おそらく舞台上部空間の扱いや、上手と下手の出はけぐちの奥にパネルを置くかどうか問題を考えて、敢えてイチョウの背景に独立したパネルとLHQを置いたのだと思われます。
こういった舞台装置への気遣いは確認できたのですが、はけ口の奥には明かりがないというのが少し気になりました。そういう構造なのだと言われればそれまでですが。
ラストシーンでは、イチョウが奥に見える窓のところに家族が集合して写真撮影するという場面がありました。そこで単サスで明かりが入ったのですが、窓枠に明かりが漏れていました。ここはきらいたかったところですね。


■秩父農工科学高校「流星ピリオド」
まずもって照明は関係ない話ですが、冒頭から〇秒に一度、人は願うことを許されている、なんていうセリフがありまして、鴻上尚史のハッシャ・バイを思い出したのは私だけでしょうか?
さて、さすが裏方に凝る秩父農工科学だけあって、すごい舞台装置をつくってきました。照明においても、サスもシーリングもネライがいっぱいです。フォグ(スモーク)使うわ星球も使うわ流れ星は流れるわなんでもやってましたね。
流れ星ですが、星球とは別のバトンにワイヤーをひっぱって仕掛けをつくっていたようです。照明的な視点でいうと、星球は通常の回路から電源をとって調光卓で操作していたと思われますが、流れ星の電源は直回路からとったものと考えられます。また仕掛けの操作も調光卓側ではなく舞台袖でやっていたことでしょう。
ただ、これは毎度のことですが、明かりに凝りすぎて、例えば役者がキワまでくると顔取れてないところがあったりして、細部までは追い切れていないのが残念な印象です。例えばラストシーンで、役者が立ったままだと暗いんですね。役者がネライに入ってくれることでやっと顔がとれるのですが、入る前からセリフは語っているので、その時点でどう見せるかなどを考えてほしいところです。


■徳島市立高校「どうしても縦の蝶々結び」
細部まで気をつかってよく作られた舞台セットでした。扉にはすりガラスをつくっていたり、演出と絡んでとてもすてきな出来栄えだったと思います。しかも、根本的には具象で作った舞台装置なのだけれど、照明も使いながらシーンによってそれをうまく他の場所に思わせようとする力もありました。いやらしくなく全体をブルーで染めて、部分的にだけ単サスを使うといった手法ですね。高校演劇では、具象舞台を作ってしまうとそれ以外の用途で舞台をあらわすことをしない傾向がありますので、ぜひみんなに見習ってほしいと思いました。
照明の技術的には、おそらく地明かりも自分たち用にナマ明かりを別に用意してシュートしていたり、敢えて壁を染めるための明かりを用意していたり、廊下を染める明かりをSSやサスで用意していたり、シンク狙いをつくっていたり、上手の校長室を明るくする明かりなど、細部まで考えてつくられていたのが好印象です。たまたま灯体を吊っていたバトンのタッパが低くて見切れていたのですが、校長室をねらった明かりはバンドアできっていました。こういう些細な道具を使うというのが、気を使える証拠ですね。(見切れていたのはミスだと思いますが。)
なお、実物コピー機の電源も舞台からの直電源です。


■名取北高校「ストレンジスノウ」
オーソドックスな地明かりで、あまり特殊なことはやっていませんでした。強いて言うならば、単サスでの一人セリフがありましたが、明かりはプロサスからで、シーリングからとってはいないようでした。もちろんプロサスでも角度的には顔はとれるのですが、もしプロサスの位置によって立ち位置が自動的に既定されてしまっていたとしたら、方法はいくらでもあるんだよと伝えてあげたいところです。
装置としては、センター奥に扉があり、役者のではけは基本的にそこからでしたので、役者の動きに縦動きをつけられるようになっていました。「誰かがくる」という、登場の予告が作品のひとつの特徴でしたので、その登場が劇的に描けるという意味でいい装置でしたね。


■日立第一高校「白紙提出」
冒頭ダンスシーンから見せてくれます。パーライトをつかって、ダンスシーン用にチェイスを組んでいました。また下手からフォグを出していましたね。(あまり煙の量が多くなかったようですが。)ころがしを上手、下手それぞれにおいて、パネルに役者の影をだす、なんていうこともしていました。また、SSで看板にむけてねらいをつけ、看板あてとして使用していました。吊りものの看板を明るくするにはSSを使うのが王道です。
通常シーンでは、舞台に灯入れした市販電気スタンドがありました。こういうものも舞台に置いて良いのだといういい実例ですね。
特徴的な明かりとしては、夕焼けから夜にうつりかわっていくシーンでしょうか。最初はなんてことのない昼間の明かりでしたが、夕焼けになるにつれ、フロントからアンバーをいれ、ローホリをピンクに徐々に変えいき、そして下手からセンターに向けてサスでアンバーを差し込むようにいれていました。そして夜になると、もろもろのアンバーを消し、ローホリを紫系に変え、フロントも消してシーリングとサスによるナマ明かりに徹していました。色がアンバーからナマになるという変化だけでなく、人の影がどう伸びるかという意味で、光の方向もしっかりと考えられていました。
プロジェクターの埋め込みはパネルからです。これは秀逸でした。今大会ではじめてフォローピンスポットライトも使っていました。
欲をいえば、ラストシーンは単サスだけでなく、下手に役者が動き出すさまをSSなどでねらいたかったですね。ピンスポでもよいのですが、緞帳でさえぎられてしまうことを考えるとSSか、あるいはちょっとしたバックサスもよいかと思います。

明日に続きます!

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