第9回高校演劇サマーフェスティバルinアートスフィア観照記。三日目。
●韮山「見果てぬ夢」
明かりの転換のキューの伝達がうまくいっていない印象を受けましたが、明かり自体はとても模範的な、良いものだったと思います。舞台奥は、平台などでタッパを少し上げていましたが、普通にしていればここでは顔が取れません。しかししっかりとSSを設置して役者の顔が見えるように配慮をしていました。また、舞台奥は中割幕で若干間口を狭くしていたので、舞台奥で地明かりとして利用していたフレネルのサスも、ツラ側のそれの灯体数5に対して3つと少なくしていました。これによって、無駄に中割幕に明かりがかかってしまうことを防いでいたのです。
袖幕に明かりがかかってしまうと言えば、ラストシーンでふってきた花びら(?)
を狙っていたSSは、それぞれ逆側の袖に思いっきり明かりがでてしまっていたようです。これは、ツラ側に設置したSSから奥ぶりに狙うということをしていたから起こってしまったことで、それぞれ舞台と平行に狙いをとれば良かったかもしれません。
●甲府昭和「どうしておなかがへるのかな」
甲府昭和のこの作品は、最初から最後まで、たいへん綺麗な明かりで感服しました。舞台センターの平台の上が演技の中心でしたが、ここに6灯ほどナマ明かりを用いて地明かりにしていました。中心に立っている「木」に対してのネライもあり、夕方のシーンではかわりにアンバーの明かりをそこにあてるという工夫もしていました。
この学校の明かりの秀逸なところは、シーンの中でも細かく明かりを変えていたことでしょう。役者同士で台詞が幾度も展開されるようなところではしっかりと顔の見える明かりをつくり、無言で役者のたそがれた姿を見せるところでは段々と余分な明かりを消してタッチ明かりだけを残してみたりと、役者だけを見ていると気づかないような、なかなかにくい明かりを作っていました。特に派手さはありませんが、小屋の基本的な機材だけで出来る綺麗な明かりのお手本とも言えるでしょう。
●朝霞「すべての犬は天国へ行く」
舞台を面側と奥側に分けて使用していましたが、それを役者の演技だけでなく、照明でいかに客にわからせるかが、この芝居の照明の課題だったと思います。サス明かりに関しては、バトンが豊富にある劇場なので、ツラ側はプロサスに吊った灯体を使ったり、奥側は他校も地明かりに使用していたサスバトンの灯体を使用したりという選択が可能です。しかし、顔取りの明かりに朝霞は苦労していたでしょう。というのも、シーリングにせよフロントにせよ、前から明かりをとれば自然にそのネライの奥にも光は漏れてしまいます。つまり、ツラを狙ったとしてもその奥に明かりは漏れてしまうのです。逆に、今回の仕込では舞台奥だけを狙うような前明かりが作られていなかったのか、奥側の演技の顔取りをしようとしたとき、自然にツラの役者にまで明かりが当たってしまうような状況がありました。よって、顔が暗いシーンが随分と続いてしまったり、舞台全体に明かりがあたりすぎて演技エリアの区分けがよくわからないといった状況が生まれてしまっていました。
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