毎年恒例ですが、例によって全国大会(第60回全国高等学校演劇大会)に行ってきました。1、2日目を見に行ってきたのでその照明のレビューを書いてみたいと思います。
会場となったひたちなか文化会館大ホールですが、奥行きのある芝居に使いやすいホールでしたね。照明機構としてはサスバトンが4つでしたが、ボーダーからの回路取りや美術バトンへの立ち上げ等で、吊り位置はたくさん確保していたようです。
2014/7/28、茨城県ひたちなか市のひたちなか文化会館大ホールにて。
●岐阜県立池田高等学校「麒麟児-killing G-」
舞台美術賞を受賞した池田高校です。アールの開帳場という特徴的な舞台装置で、照明視点で言うと大道具として設置された単管にパーライトが上下4灯ずつ仕込まれてたところが目につきます。舞台上から客席(天井)に向かってねらわれていた明かりですね。役者の後ろから後光が差す演出効果でした。劇場の客席の壁が白いので、客席側が異様に明るくなるという逆効果もありますので、このへんは劇場との相性次第ですね。そして、芝居途中で役者が出ハケのときに灯体にぶつかっていました。気を付けましょう。
また、これとは別に舞台奥にスパイラルマシン(?)を置いており、こちらも客席に向かって照射しあやしげな明かりを作れていました。
昨年もLED灯体を使った学校がありましたが、今年の池田高校もLEDを4灯持ち込んでいました。時代の流れを感じますね。
オープニングは暗転状態からいきなりピンで狙うという至難の業にチャレンジしていました。暗転から狙うのはかなり難しいのであまりオススメしません。
●青森県立青森中央高等学校「翔べ!原子力ロボむつ」
音響はすべて生音、舞台装置なし、照明も地明かり、という舞台でした。2年前の青森中央高校「もしイタ」と同じ創作方法です。
しかし照明的には、きれいな地明かりで関心しました。なんてことのない明かりかもしれませんが、役者をしっかり見せるという当たり前の原点に立ち返って作られた明かりです。例えばSSひとつとっても、部分的にではなく大きくとって、きれいに舞台上の役者を照らせていました。地明かりのお手本のようでした。
途中ミラーボールがまわっていましたが、SSからミラーボールに向けて狙っていたようです。
●久留米大学附設高等学校「女子高生」
教室を模して教壇と机や椅子がある舞台セットです。途中場面転換の際に、ブルーの明かりになって役者が踊りながら(?)移動するという点が特徴的でした。
ブルーのホリゾントでシルエットを作り、SSを加えていたのですが、そのSSが役者を狙っているのかどうかイマイチわからなかったので、もし役者を狙いたいならそれに相応しい位置に置くべきでしょう。役者が舞台のツラに出てきてしまうと、劇場構造上、袖幕の後ろに設置したSSだと狙いづらいですね。演出意図があるのかもしれませんが、役者がシルエットになってしまってせっかく踊っている姿が分かりづらいなと感じました。
場転中、ソースフォーか何かで模様を出していたのも特徴的でした。
●長野県松川高等学校「ちいさいたね」
途中まで前明かりがなく顔がとれていないのが最大の致命的なミスでした。マニュアル操作でのオペミスかと思うのですが。幕開き後15分ぐらい経ったところで一瞬暗めになり、その後明るくなりましたね。バックサスで入っていたナマのパーライト4灯がここで入ったのはどんな意図だったのか気になりますが、とにかく明るくなりました。
特殊な仕込みとしては、上手袖からのストロボ、上下の舞台上に設置した#22のコロガシなどでしょうか。
大道具の遠見がホリゾント幕とローホリの間に設置されており、ローホリの明かりの影がホリゾント幕に出ていたのは意図的だったのでしょうか? 意図的でないとすれば、奥行きある劇場なので、回避することはできたのではないかと思います。
●島根県立出雲高等学校「見上げてごらん夜の☆を」
単サスのネライの数は、今大会で最も多かったのではないでしょうか。というぐらいに照明に凝っていました。星球のこだわりを見ても、明かりの美しさを気にしていることが想像できます。
しかし例えば台上をねらった明かりなど、他所への明かりの漏れを気にするあまりか、舞台装置自体はきれいに明かりが取れていても、役者がそこに立つと顔が取れないという本末転倒になっている箇所も目立ちました。様式美を大切にするあまりの逆転現象に思えます。
他にもエプロンに1kwの灯体を仕込んでいましたが、客から丸見えの位置に置くというのは、どんなに演出効果が高くても邪魔と感じる人には60分ずっと邪魔なので、何が大事なことなのかよく考えたいものです。一方で、SSを袖幕の後ろではなくしっかりエプロンに持ってきて、舞台ツラでの演技を狙えており、役者を見せることに対して忠実な意識が見て取れました。
出雲高校にはできる照明家がいると思われますので、ぜひこれからもいい明かりを探求していただきたいと思います。
2日目のレビューはまたあとで。
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