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2005年8月12日
第11回高校演劇サマーフェスティバル観照記(二日目のみ)

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関東ブロックの高校が集まって上演する、高校演劇サマーフェスティバルの2日目(2005/8/12)のうち、3校を見てきました。
その観照記です。アートスフィア(東京)にて。

◆静岡県立韮山高校「その時ぼくはコインを空高く投げた...」
舞台装置はいわゆる囲み舞台で、パネルがシンメトリーに立てられていて部屋の中を表すという装置でした。基本的には室内で進展するストーリーだったので、地明かりはいたって普通だったわけですが、随所随所で面白い照明を作っていました。
例えば盗んだお金がトランクから誤って落ちてしまうというシーンでは、ナナメで全体を赤に染めつつ、センターの役者の立ち位置をバックサス気味に白く照らしたのなど良かったですね。ただのバックサスではなく、4つ灯体を用いていたので(ソースフォー?)広がりのある感じが作れたと思います。
また、中央のパネルが開閉して、奥からスモークの煙と一緒にコロガシの明かりが出てくるところもよかったですね。決してコロガシの明かりを強くしすぎず、役者が見える程度にゲージを抑えながら、いい明かりになっていました。またその際の、中央に立つ役者の顔取り明かりもとても好感でした。シーリングから顔取り用の明かりが作られていたわけですが、かなり角度の低い位置(舞台から離れた位置)のシーリングが用いられていたように記憶しています。
単サスの顔取りというと、あまり角度を甘くしてしまうと真正面から明かりが当たる感じで見た目がおかしくなりがちですが、このシーンに限っては、その真正面から明かりが当たる具合が、ぼんやりと役者を浮かび上がらせることに繋がり、成功していた事例だったと思います。シーリングバトンがたくさんあるこの劇場ならでは、の方法でした。


◆茨城県立土浦第一高校「CUT&START」
金魚鉢方式をとった芝居で、基本は上手にいる人たちが過去を回想し、その過去が下手で演じられるという内容でした。
ですので、基本的にはその上手と下手をエリア分けして照らす、というのが地明かりのパターンの一つでした。
ただ、主に下手の演技を照らしている際、前明かりはあまりフロントを使わず、シーリングだけでカバーしていたようです。フロントを使わないことで、上手にまで明かりが漏れるのを防いでいたのでしょうが、単純にシーリングのみで照らすと、どうしても横から見たとき役者の顔に影が出てしまいがちですね。地明かり自体も、ナナメではなくトップサスの地明かりが基本だったので、そのように感じました。
しかし、そもそもその下手で演じられている演技自体が、「過去の回想」というシチュエーションでしたので、その多少の影具合が逆に演出としては効果的なのかな、なんていうふうにも思いました。
また、照明とは関係ないですが、ラストにプロジェクターを使っていましたね。
プロジェクターを客席上手前方に設置していたわけですが、それを照射する用の小ぶりのスクリーン幕を吊りものバトンに吊って、降ろしてきていました。
プロジェクターを使うとなると、ホリゾント幕に照らせばいいじゃん、という考え方が横行していますが、このようにわざわざプロジェクター用にスクリーンを用意した方が見栄えは良いですね。


◆筑波大学付属駒場高校「ドグラ・マグラ」
抽象舞台でしたが、それに合ったとてもよく出来た照明でした。
舞台には、透明なチューブ状のものがいっぱいぶら下がっていたのですが、それを照らす用か何なのか、バックからナマのパーライトがずっと点いていました。
吊りもので何かを作るとき、吊ったはいいけど照明でそれらを照らさない学校が多いのですが、筑駒はそれがしっかり出来ていました。しかも、吊りものの材質をよく理解し、バックから当てるというのはとても効果的でしたね。
ナマのパーライト以外にも、コロガシとして青色が入った灯体も舞台奥に置かれており、それらも吊りものを効果的に見せるのに貢献していたと思います。上下に置かれていたコロガシがパーライトで、センターに置かれていたコロガシ数灯が、フレネルの灯体だったような気がします。
地明かりとしては、抽象的な表現ということもあってか、そう簡単にはナマ明かりにしない感じでした。で、フロントのナマは地として使っていなかったわけですね。フロントを使わないと、土浦第一のように役者の顔に影が出てしまうかと思ったんですが、バック(サイドからのバック)のパーライトや、SSがうまく機能していたおかげで、それもカバーすることが出来ていました。
バックサスを使う高校は、そう多くはないんですが、筑駒はそれを見事に扱えていて、かなり感心しました。

それにしても、土浦第一高校のお芝居のあと、カーテンコールでしみじみしてしまいました。演出さん(?)が、「このような素晴らしい舞台に立てて光栄です。きっとこの経験は、一生忘れないものになると思います。(感動)」というようなことを言ってたんですよ。んー、そうだね、アートスフィアに立てて良かったよね、としみじみ勝手に思った私でした。
サマーフェスティバル上演校の皆さん、おつかれさまでした。

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