第10回高校演劇サマーフェスティバル観照記です。今年は二日目(8/6)だけ行くことが出来ました。その照明の感想なんかを書いてみます。
●千葉県立流山東高校 『當世女子高生氣質?哀しい夜にはヤングマン?』
比較的、オーソドックスな明かりでした。
特徴的なところとしては、暗転時のブルー暗転ですか。ブルー暗転とは言ってもホリゾントをブルーに染めるわけではなく、SSを使ってブルーを入れていましたね。舞台装置に、しっかりとした教室を作ってきていたんですが、その教室の奥にある窓をうまく使い、ちょうど窓の奥からブルーの明かりが入るようになっていました。そうすることで、窓という装置部分が青くなり、うまいことブルー暗転に出来たわけですね。
あとは、明転時に、下手にある人形(芝居の象徴的存在?)を先にFIしてから、地明かりをつけることで客の視線をそこに向けさせるところとや、窓から差し込む夕陽(下手の窓オクからSS)の効果などもしっかり練りこまれていました。
下手からの夕陽のとき、これが結構おもしろくて、同時にホリゾント幕に雲が投影されてたんですね。その雲が下手から当てられていたので、明かりの流れとして、夕陽も雲も下手からという一種の約束事が出来てて、違和感なく見ることができました。それぞれが逆方向から当てられてても、別に問題はないんですが、この高校は雲を2種類持ってきていて、上手からのものを先のシーンで使い、夕陽のSSのときに下手からの雲を使うという使い分けをしていたわけです。仮に夕陽のSSがなくても、2種類の雲で時間の経過を表すという、うまいやり方です。
●群馬県立高崎女子高校『最悪に思えるやり方』
舞台をツラとオクに分けてアクティングエリアを決めるという、奥行きのあるアートスフィアならではの芝居づくりをしていました。
ここのお芝居の照明の特徴は、なんといっても単サスでしょう。あえて顔を見せないようにするために、バックサスだけで顔取りの明かりなし、というものがいくつかありました。そのバックサスに入る人物は、芝居中一度も顔を客に見られない役回りだったので、バックサスによってシルエットだけ見せるというのは大いに効果があったと思います。
中途半端なトップサスではなくバックサス。気持ちいいですね。たしか、バックサスが5つぐらいあったように記憶しています。単サスの効果をしっかりわかって使った好例ですね。
それぞれの役者アテのバックサスだけでなく、オープニングでは全体を染めるバックサスなんかもあり、ものの見事にシルエットの世界を作りだしていました。
●長野県上田染谷丘高校『櫻の園』
舞台オクにいくつか置かれた、円筒形のオブジェを、照明がうまく活かしていたのが印象的です。このオブジェ、空間によってそれが桜になったり、抽象物になったりしていたのかな、と解釈できたのですが、それぞれの役割にあわせた効果的な明かりが作られてましたね。
「桜」を表現するとき、トップサスで、それぞれの円筒形のオブジェにピンクの明かりを当てていました。「桜」がキーワードになるこのお芝居のオープニングに、こういった綺麗な明かりがあると気持ちよく芝居に入り込めますね。
ラストシーンでも「桜」が出てくるところがあるんですが、そこはクライマックスということで、前述のトップサスに加えて、円筒形そのものの中に明かりを仕込んで明るくさせていました。これも面白かったですね。円筒形それ自体が、透ける素材で作られていて、内部に灯体を仕込めばオブジェがそのまま染まるという仕掛けです。クライマックスだからこそ、オープニングとは違う桜の明かりを作り、客を楽しませてくれました。
ちなみにこの円筒形のオブジェですが、屋内を表現しているシーンでは、これまたきれいな使われ方をしていました。アクティングエリアを舞台ツラだけに限定して、オブジェのある舞台奥には役者が移動しないようにしていたんですね。そうすることで、地明かりは舞台ツラだけに当てれば良いことになります。そして、舞台奥の暗いところに立っている円筒形オブジェには、サイドからSSでタッチをつけていました。こうすることで、演技をしている役者の背後に、立体的な背景が出来るわけですね。なかなかうまいやり方です。
●埼玉県立越谷南高校『Portrait』
地明かりは普通の明かりのように見えましたが、そのなかでわりと細かなテクニックを使ってたのがこの高校です。普段の地明かりのなかで、舞台上部の空間に吊り下げられていた布に、うまくSSが当てられていました。吊りものを、吊るだけ吊って、それ用の明かりを作らない学校がけっこうあるんですが、それもしっかりクリアしていましたね。
他には例えば、舞台奥が「部屋の中」という空間になるとき、そこへの導線にあたる階段部分に、密かにバックサスを入れてたことなんかが面白かったです。地明かりにプラスして、微妙に階段部分だけバックサスが入っていたことで、その階段部分で空間が隔てられている・ドアがある、というのが感覚的に伝えられていたのではないかと思います。
他にも、エリスポ(ソースフォー?)でエリアを切った明かりをつくったり、いろんなテクニックを使っていました。
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