毎年恒例となりました夏の高校演劇全国大会の照明にフォーカスした鑑賞記録。今年の会場の佐賀県鳥栖市にやってまいりましたので書いていきます。
技術的なことや、珍しい手法について中心に書きますので、照明がどうかということと、その作品が良かったか、感動したかという視点とは関係ありません。
会場は鳥栖市民文化会館。
さて、ではまず一日目から。
(今年も、直後にツイートした内容を貼って、補足を書く形にしてみます。)
■栃木県立小山城南高等学校「無空の望」
小山城南。演説のマイクの音はプロセニアムのスピーカーではなく持ち込みのパワードスピーカーみたいなステージセンターに置いてたやつから出てた様子。ちょっとした臨場感あり。一方で生徒会長の影アナはプロセのスピーカーから。 #高校演劇
— Haruo Aoki (@nekodemo) July 27, 2019
照明的に特筆すべき珍しいことはしていませんでした。
裏方的には上記にも書いた通りスピーカーの使い分けが特徴的だったと思います。大会でも、プロセニアムのスピーカー以外に、舞台の役者が聞くためのハネカエリのスピーカーを使うこともあります。また、場合によっては特別に仕込んだスピーカーも事前に音響席から操作できる形で仕込める場合もあります。しかし小山城南は、おそらく劇場の既存のスピーカーから音を出すマイクとは別に、ワイヤレスマイクとスピーカーを用意したものと考えられます。
■大谷高等学校「ふじんど」
大谷。SSのシュートがうまくいってないのか、役者が奥からツラへ動く際に暗くなるシーン多々。地のブルーはあるものの惜しい。3サス付近のバトンからパーでバックサス。ちょっとバトンタッパ低めで。フォグ使ってるけど流れやすくてすぐ消える #高校演劇
— Haruo Aoki (@nekodemo) July 27, 2019
フォグ(スモーク)を使っていましたが、煙がすぐ消えてしまうのが難点でしたね。この劇場の空調のせいでしょうか。パーライトをバックから灯すという演出をやっていたのですが、フォグがもっときれいに行き渡っていれば、またその明かりの印象も違ったことでしょう。
ちなみにこういうときは、光を見せること(または一文字幕に遮られないこと)に意味があるので、バトンのタッパを少し下げて使うことがあります。音楽ライブで、照明機材がまる見えになっているみたいな感じですね。今回のパーライトによる明かりもそのようになっていました。(初日は佐賀東までずっとその状態だったと思います。)
■島根県立横田高等学校「雨はワタシの背中を押す」
横田。ピン使用。全体的にキレイな明かり。ラストは単サスにSSでセンター役者ねらいつつ、全体は光量落として他の部分をシルエット気味にする心地よい明かり。舞台は割幕でしっかり間口を自分達用にせめてる。生徒役が背中を見せる思い切りのいい立ち位置もこだわり感じる #高校演劇
— Haruo Aoki (@nekodemo) July 27, 2019
今大会最初のピンスポットライトを使用した学校です。やけに綺麗に顔をとれてるなと思ったらピンでした。
全体的には一般的な明かりでしたが、上記にも書いた通り、ラストシーン(走るシーン)はシンプルにきれいな明かりを作っていました。何も特別な機材を使っているわけではなく、単サスにSS、ホリゾントというどの大会、どの劇場にもある機材たちですが、それまでに特段派手なことをやってこなかった分、最後にそれらの組み合わせが登場したときに効果を発揮するのです。
なお、中割幕の後ろに舞台セットを隠してましたが、客席の位置によっては見切れてたようです。
■鹿児島県立屋久島高等学校「ジョン・デンバーへの手紙」
屋久島。ホリゾント多用。同じようなシーンでもホリに色いれるときもあれば入れないときもあり、不思議。ブリッジ音楽あるけど明かり変えずにストップモーションで場転のところとか間延び。お芝居がとても丁寧なので音や明かりがもう一歩惜しい。伐採音はLR分けてる。 #高校演劇
— Haruo Aoki (@nekodemo) July 27, 2019
ホリゾントを多用するお芝居でした。シーンの切り替え時にホリゾントが変わる、というところがありました。一方で照明は何も変化しないけれどストップモーションになって実は場面転換でしたというシーンがありました。いずれも演劇の作り方としてはありですし、お芝居の中で暗黙の了解的なルールを作ってしまえばお客さんはついてくると思うのですが、一方で暗黙の了解を途中で覆すと違和感を感じます。
伐採の音が鳴るシーンでは、その音を出すスピーカーを分けて使っていました。これだけでも臨場感が違ってきますね。
映像を投影していましたが、手前の袖幕(中割?)を少し狭めていたので、見えづらい席が発生していました。
■佐賀県立佐賀東高等学校「君がはじめて泣いた日も、世界は普通の顔をした。」
佐賀東。今年はちゃんと顔取れた。SS台上とれてるし、エプロン、一袖うしろ二袖うしろにも置いてツラ側手厚く落ちないようにちゃんと。ナナメアンバー使ったのは初日の学校では初めてか。パーのバックをじんわり入れるのは分かってる。上下パー2灯ずつステージから客席に向け置きあり。S4あり。
— Haruo Aoki (@nekodemo) July 28, 2019
佐賀東高校といえば、以前全国大会に出場した際に凝ったエリア分けをやろうとしすぎて結局顔がうまくとれてなかったということを覚えているのですが、今回は見事ちゃんと顔が取れるようになっていました。
当時のこのサイトの照明記録を読んでくれた佐賀東の子がいろいろ思考錯誤したとかしないとか聞いていますが、あれから数年を経て、先輩たちから何か引き継いだのでしょうか?
さて、佐賀東高校はもともと自前の機材もどんどん購入して照明への研究熱心さもあるのですが、今回きれいに作っていたの中で目立っていたのはバックに仕込んだパーライトでしょう。これを、仕込んだことはもとより、印象的なシーンでゆっくりフェードインしていくやり方が秀逸でした。パーライトは劇的な明かりを作れますが、いきなり入れる(カットインする)とシーンの雰囲気が変わり過ぎる危険もあります。でもそこを丁寧なフェーダー操作できれいな明かりとして仕上げていました。お芝居に合わせてオペレーターがノッて操作してるんだろうかなぁなんて想像しました。
明日に続きます!