ネコでもわかる照明の部屋 - 舞台照明

全国大会観照記 福島大会(復興支援香川大会)二日目

例によって久々に全国大会(第57回全国高等学校演劇大会)に行ってきました。2、3日目を見に行ってきたのでその照明のレビューを書いてみたいと思います。

2011/8/6、香川県丸亀市の綾歌総合文化会館アイレックスにて。

まず大前提ですが、今回のレビューはあくまで全国大会での上演のレビューです。NHKで国立劇場(優秀校東京公演)の映像が流れるかもしれませんが、それとは違う明かりですのでご承知置きを。

小屋としてのアイレックスですが、サスバトンは2本、シーリングの位置も若干微妙なところにあり、全国大会の小屋としては照明的にはあまり使い勝手が良いとはいいにくいところでした。しかし幸か不幸か、そんなに凝った照明を扱う学校もなかったようです。機材はおそらく松下です。


●津曲学園鹿児島「窒息」
途中からの観劇だったので、割愛します。

●福島県立大沼「ひきなかへしそ?悲哀白虎五人男」
大胆な明かりを作っていましたが、おそらく意図的ではない大胆さが有りすぎたかなと思います。
例えば教室のシーンでは、明かりはセンター中心に明るくしていたわけですが、出ハケは上手から行われていました。演出的に上手から出入りするのをお約束とするのはまったく構わないんですが、その際上手の明かりの当たっていない部分での演技をどう解釈させるかというのは考えるべき事項だと思います。少なからずその明かりの当たっていない部分での台詞もありました。もちろん上手にもハレーションで薄暗く人がいるのはわかるので、そういうものだと思ってしまえば良いのですが、繊細さが欲しいところでした。
単サスで前明かりがない状態というのがあったり、単サスが一文字幕にかかってたり、気にして欲しいところが満載でした。台上のSSの当たりの位置も、芝居の中身をだいぶ左右するものでしたので考えて欲しかったです。

●大谷「逝ったり生きたり」
あまり変化のない明かりでしたが、十分良い明かりだったと思います。
芝居は主に舞台前方で行われるため、明るさがあるのは1サス付近であり、2サスはブルーで染めていたと思います。アクティングエリアとして使わない部分には無駄な明るさを出さないのは、特にこれのような2人芝居では大事なことです。
SSの使い方は効果的でした。舞台後方上手ベッドにある点滴にうまくネライが定まった奥のSS。それから前方のSSにおいては、床を嫌わず道具である箱の影を出し、心理描写的にもいい感じの明かりを作れていたと思います。
前明かりはCLを使わずFroで済ませたのは、おそらく役者の陰影を意識してのことでしょうか。このホールの基本仕込みのCLでは、ちょっと角度がつきすぎだったこともありますし、大谷の選択は成功だったと思います。

●愛知「紺屋高尾」
単サスは、上手下手それぞれ1本ずつの使用のみ。一人台詞的なシーンは数多くありましたが、そのほとんどはピンスポットでねらっていました。しかし、そのピンスポットの操作がどうにも残念な感じでした。プロでも難しいクセノンピンの操作ですが、これに高校演劇で頼るのは難しいですね。どうやってゆらゆらしないように操作するかも大事ですし、どんなふうな色や大きさやエッジで使うかなども考慮すべきでしょう。
たとえば、愛知はエッジを超シャープにして使っていましたが、このお芝居でシャープである必要があったのか疑問です。また円の大きさも大事です。冒頭のおいらん道中のシーンで、高尾太夫をピンスポであてていましたが、傘にも明かりがあたってしまい、その影の出方は私には興ざめでした。高尾太夫の美しさ半減を回避するため、どうやってピンで当てるか考えるべきだったでしょう。またこのおいらん道中は、暗転幕の前でのお芝居でしたので、CLで明かりをとっていましたが、そもそも暗転幕前用のシュートではないものなので、かなり汚い明かりでした。このホールに回路がないことは重々承知ですが、導入のとても大事なシーンなので悔やまれるところです。
吉原のシーンでは灯入れがありました。

●北海道北見北斗「ぺったんぺったん!」
まったくの地明かりで、最初から最後まで何も変化がありませんでした。潔いですね。大黒幕に具象の教室セットに地明かりで、特に何も言いようがありません。教室の黒板の向きからするとへんな配置の教室だなぁなんて思いましたが、本質ではないので気にしないことにしましょう。
照明ではないですが、SEを出すスピーカーの位置はもうちょっと気にしたほうがいいかもしれません。これは国立公演では直るかな...。

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