ネコでもわかる照明の部屋 - 舞台照明

国立劇場公演2007(1日目)レポート──富士高校「紙屋悦子の青春」

続いて、静岡県立富士高校「紙屋悦子の青春」の観照記。


●静岡県立富士高校「紙屋悦子の青春」

衝撃です。
この富士高校の「紙屋悦子の青春」は、相当よく出来た作品です。久々に泣かされました。役者達の演技も去ることながら、照明や装置、音響の技術、演出感もかなりのものだと思います。

照明は、おそらく私がかつて見た高校演劇作品の中でもトップクラスの出来映えです。派手さはありませんが、とて素敵な明かりでした。中でも、ゲージの上げ下げがとても綺麗でした。こんな綺麗なフェードアウトはなかなかお目にかかれません。
例えば、日常の部屋の中のシーンから悦子一人に明かりが当たり、暗転をするというシーン。特に悦子に台詞があるわけではなく、演出としての悦子の心情を描く「間」をとったシーンでしたが、「日常の」地明かりがすっと落ち、いつの間にかSSが入り、悦子の表情が見え、続いてすーっと全体がフェードアウトしていく。なんと素敵な明かりなのでしょうか。このフェードアウトだけで泣きそうになりましたよ。

その他特徴的なところとしては、冒頭の歳を取った二人のシーン。前明かりはシーリングからアンバーが入っていましたが、奥のサスセンターから二人の立ち位置(下手ツラ)に向かって斜めバックでアンバーの明かりが入っていました。バックサイドからの明かりということで、役者の輪郭がうまく浮かび上がり、シンプルながら良い明かりでしたね。
また、そもそもアクティングエリアをしっかりと決めて袖幕を狭め、広い国立劇場の舞台をうまくまとめていました。明かりもそれにあわせて、サス明かりも前明かりもアクティングエリアのみに当たるようにしていました。
桜の木にあたる明かり(おそらくSSから)などもしっかりとプランされていて、美しかったです。

幕開きもしっかりと「間」が取られていて、緞帳が開いたからといってすぐにフェーダーを上げるのではなく、緞帳とMEとのタイミングから、いい感じになったところで綺麗に明かりがフェードインしていました。前述したアンバーのシンプルな明かりでしたがめちゃくちゃ美しい入り方です。

こんな美しい間を作ることが出来るのは、きっと役者の演技と、フェーダー操作をする裏方部員との息がぴったり合っているからなんでしょうね。決して主張しているわけではないが、お芝居を適切に誘導する間の合った明かり。これは、ずっと同じ時間を過ごして芝居作りをする部員たちだからこそ出来ることなんだろうと思います。
映像ではなかなか分かりにくい部分だと思いますが、NHKをご覧の方はその間もぜひご堪能ください。

照明は置いておいて、演技も素晴らしかったです。個人的に、静岡県東部地区の学校の舞台ってどれもこれも好きなんですよね、、、
富士高校演劇部の皆さん、おつかれさまでした!

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