ネコでもわかる照明の部屋 - 舞台照明

第40回関東高等学校演劇研究大会・南関東大会 観照記(2日目後半)

 南関東大会を観に行ってきました。さすがは東京都内で実施されるブロック大会だけあって、多くのお客さんが集まっていました。場所は、東京都立多摩社会教育会館です。
 関東大会が前回東京で開催されたときに使えた、設備の整った とある劇場が今年は使えなくて云々、という話をよく聞きましたが、そうは言っても今回の劇場もしっかりしたホールでしたし、使わせてもらえるだけ感謝しなければならないと思います。

 さて、今回は、二日目の後半三本を観劇してきました。照明レポートを記します。


●(神奈川)麻布大学附属淵野辺高校「ジプシー 千の輪の切り株の上の物語」
 調光卓は小屋によっていろいろタイプが違います。最近は、特にブロック大会のような規模の大きな大会になってくると、シーンをあらかじめ記憶しておいて、あとはクロスフェーダーなりサブマスだけをあげるという、記憶卓使用が多い傾向にあります。しかし今回の劇場は、マニュアル卓だったようです。(うちのサイトで紹介している「調光卓の使い方」そのまんまの方法で操作する卓ですね。)
 そのせいか、この高校は照明オペレートにだいぶ手こずってるな、というのが第一印象でした。
 明かりのゲージ自体は、あらかじめリハーサル時などにメモっておいたフェーダーの値をそのまま再現していくべきなのですが、なかなかそうはうまくいかないこともあるんですね。そのとき、マニュアル卓であれば、その明かりを出しながらプリセットフェーダーを客に気づかれないように少しずつ動かして、適切な明かりにしていくのが良いのです。しかし、その「客にきづかれないように」というのが大変難しいのです。
 淵野辺高校の場合、地明かりを客に気づかれないように調整する、というのに手こずっていたように見受けられました。
 あと、それとはまったく別の話ですが、舞台セットの窓奥をねらっていたSSの位置が、もう少し一工夫あると良かったと思います。若干窓より奥にシュートしすぎていて、窓から出ていく人物たちにうまいこと当たってなかったように見えました。


●(茨城)水海道第一高校「ファミレスのババロア」
 舞台セットもシンプル、照明もシンプルでした。ナマの地明かりをベースに、それ以上でもそれ以下でもない明かりでしたね。役者の演技で魅せる側面の強い芝居だったため、それでおおいに結構かな、と思います。
 そのシンプルな明かりが変化したところといえば、「夕焼け」のシーンはシンプルを踏襲しつつもうまかったですね。夕日のアンバーの明かりを、フロント下手から当てて、地明かりナマとシーリングナマのゲージは若干落としていました。ツラ下手からのタッチとして機能させていました。
 また、空襲のシーンも感心する明かりでした。特にSSです。こういう象徴的シーンは、単サスを使ってしまうことが多いのですが、SSで狙ってましたね。SSなら、多少は役者の立ち位置にも融通が利きますし、他校も見習ってみましょう。


●(静岡)三島南高校「雪をわたって... ?あの日私たちは森へ行ってみた?」
 この高校は面白かったですね。役者もよく訓練されていて、裏方もなかなかのスタッフワークを見せていました。
 まず特筆すべきは、地明かりの作り方でしょう。「冬」の「屋外」の地明かりが冒頭から出てくるのですが、その表現がたいへんうまかったです。地明かりのトップのサスに、たぶんコンバージョンのBの何かを入れて、色温度を高くしていました。ただのナマ明かりより冷たい感じがして、冬の雰囲気がよく出ていましたね。また、ナナメにグリーンを入れていたのも秀逸です。グリーンは「森のシーン」があったから、この色を選択したのかな、と思いましたが、自己主張しない感じで、さきほどのトップのサスの地明かりときれいにマッチしていました。
 もう一つ感心したのが、セロ弾きが出てきたとき、セロ弾きをバックのナマのパーライトのみで当てていたシーンがあったことです。バックサスでわざと影を出すというのは、高校演劇だと使うところをあまり見かけませんが、三島南高校はいい効果を出してました。ふつうの単サスをバックから使うというのではなく、光量の強いパーライトを持ってきたというのも素敵でしたね。
 また、ラストシーンのバックからのパーライトによるライトカーテンも幻想的でしたし、緞帳が降りる寸前の、舞台セットをねらった明かりもきれいでした。舞台セット(木)をねらった明かりは、SSと、隠したコロガシを併用していましたね。
 ところで、講評のときに、審査員の森脇さんが「オープニングのスライドが出ていたシーンは、地明かりがなかったので、役者が群読してても顔が見えなかった」というようなことをおっしゃっていました。それは私も感じました。ですが、私にはそのシーンで、役者の一人だけ顔が見えたんです。これ何でかな、と思ってよくみてみたら、スライドの通気口からの明かり漏れでした。通気口などから明かりが漏れてしまうときには、周囲に影響を与えないように、極力そこをブラックラップなどで覆ってあげたほうが良いでしょうね。

 ところで、パンフレットに、審査員で舞台照明家の森脇さんの言葉がいろいろ載っています。森脇さんがここで一番言いたがっているのは「地明かりを大切に」ということですよね。
 森脇さんは2年前の中部大会でも審査員の立場におられたのですが、そのときも「地明かりを大切に」とずっと言ってました。
 今回も、講評で地明かりについて語っていらっしゃいましたが、へんな効果明かりを作るまえに、まず地明かりを極めたいものだなぁと思った次第です。

 出場校の皆さん、実行委員の皆さん、観客の皆さん、おつかれさまでした。

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