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2011年11月21日
平成23年度山梨県大会観照記 審査員してきました その2

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ということでレビューを書いてみます。長くてすみません。

●塩山高校「お葬式」

幕あきは中央に棺桶が置かれた状況。ほぼ素舞台。
緞帳が開いてから顔取り用の前明かりが入るというのはよくできていました。(ちなみに塩山高校だけではなく全校それが出来ていました)
ほとんど全照で変化もない明かりですが、ホリゾントも明るすぎず、素直な地明かりだったと思います。
途中の暗転ではブリッジ音楽がループするほどその時間が長く、せっかくのおもしろいお芝居が途中で途切れてしまったので、あそこは工夫をしたほうが良いでしょう。役者が活き活きとしているので、(セリフなんてなくてもいいですから)道具を持ち込む姿自体を芝居にしてしまって観客に見せるという方法もありかなと思いました。手はいくらでも考えられそうです。
後半のシーンでは下手から夕焼けが迫っているという明かりでした。下手からSSが当たり、前明かりはフロント下手にアンバー?かイエロー?系の明かり、フロント上手は少し弱めに入っていました。強弱のタッチがでる明かりですね。ホリゾントもUHがブルー、LHは薄めのピンク系夕焼け明かりで、明かりの作り方としては王道です。シーンとしては、夕焼けになるスピードがはやくておいおい速過ぎじゃないかと思うきらいがあったので、もっとじんわりお芝居にあわせてフェーダー操作ができると良いですね。5分ぐらいかけて明かりを変えていく、というのもありかもしれません。


●山梨英和高校「世界の終わりの物語」

舞台下手に電灯、中央奥と上手奥にパネルがありそれぞれに階段らしきものが配置され、さらにその周囲にゴミ袋やチラシのクズが散乱する舞台で幕あき。
幕あきから「おっ」と目を見張る光景が広がり、これは、と期待させる展開です。
冒頭は単サスが2本入った一人台詞から始まるのですが、トップサスだったので顔が見えづらかったのは残念です。台詞のない役者への単サスについては、あえて印象づけるために顔取り用の明かりを入れないのはありだと思いますが、せっかく台詞をしゃべっている役者には顔取り用の明かりを入れてあげたいところです。顔だけでなく、重要な小道具となるきゅうりや包丁も見えづらかったと思います。
その後は地明かりでお芝居が進みましたが、ナマだけではなくブルーやアンバーも入れて白っぽい明かりを作っていました。ナマだけだと色温度の関係で黄色っぽくなりますからね。
途中、ブルーの明かりになって、夜を表現したのかなぁとも思ったのですが、しばらくするとまた白い明かりに戻って、どうやら夜を表現しているわけでもないことが分かってきて、少々不可解に感じたことは否めません。
突然かまち(舞台の前方)に座ってきゅうりを食べるシーンがありましたが、なぜかまちに座る必要があったのか、その理由は解釈できませんでした。
電柱の高さやパネルの置き具合を見ても、完全な具象舞台を目指しているとは思いませんでしたし、それはまったく構わないと思うんですが、そうはいっても具象的に表現されているごみ袋の扱い方とのギャップに戸惑ってしまうところでした。
なぜごみ捨て場から世界の終わりを見るのか、どんなゴミ捨て場でどんな空間だったらこの物語が成立するのか、役者も演出も美術も照明も交え徹底的に話し合って共通認識を見る作業をして作っていくと良いと思います。


●甲府南高校「カガクのクニ」

幕あきではフォグを焚いてビーム明かりのあるわくわくする明かりでスタート。白い舞台セットに白い衣装、ライトブルーでおそらく上下2灯ずつのビームを中心にした明かりはとてもよく映えます。顔取りはSSを台上の役者に狙っていい感じにできていました。
普段は基本的な地明かり。ただし教室のセットの出入り口部分にはひそかに単サスをあてて明るくする気遣いができていました。これだけでよく考えてるなと思ったのですが、あえていえば少々エッジが見えていたので、灯体を変えるか、もう少しエッジをぼかすフィルターを入れるなどする工夫もできるかもしれません。
舞台セットの教室は、扉の部分が窓になっており、その存在によって役者が教室に入ってくるかどうかが分かります。しかし他の壁に窓はないため、例えば「廊下を通る人」などの表現はこれだけだと乏しいです。
しかし、パネルの両脇をあえて見切れさせることによって、上下それぞれから役者が出はけするのが見えており、おもしろい演出でした。ときには役者がパネルの裏に待機し、あえて出はけを見せない選択をとったシーンもあったりして、出はけひとつとっても見せるべきところとそうでないところをよく練っているなと思います。
哀愁漂う後半のシーンでは、夕暮れ明かりをつくっており、フロントは下手がアンバーとブルー、上手はブルーのみで若干のタッチ明かりをつくっており、そこまで大胆じゃなかったので気付きにくいところですがキレイな明かりでした。
いわゆる単サスでの一人台詞シーンでは、おそらくサス明かりではなくシーリングからのみで行っていたようです。つまり顔取り明かりのみ。サスからも明かりを入れてあげたほうがきれいにとれることは確かなのですが、顔を見せることが優先と考えれば、この選択もありだと思います。


●甲府第一高校「わが星」

緞帳を飛ばしてしまい、幕あきの前から既に舞台セットが見えているというところからスタート。円形の白いパンチ?を敷いてその周りに黒く四角いパンチを敷いたセットです。
照明操作はメモリーしていたのかマニュアルなのかは分かりませんが、この膨大なきっかけをこなしたオペレーターには頭が下がります。照明効果そのものも盛りだくさんでした。これだけのプランを考え実現するのは並大抵ではありません。
おそらく照明のことをそこそこ分かっている部員がいるのでしょう。白い床に明かりを当ててそのハレーションによって周囲の役者たちをぼんやり明るくさせるなど、明かりをよく知っているなぁと感じました。
しかしよく知っている部員がいるであろうが故に、惜しいと思わせるところがたくさんありました。
たとえば基本的な地明かり(前明かり)が舞台奥まで届かないので、舞台後方に立つ役者の顔が暗くなってしまう点。あえて円形の舞台を選択し、円形というどの位置が優れているとも言い難い立ち位置を作り上げたのなら(と私は解釈しました)、立ち位置によって顔の見え方が大きく変わるのは許容していいのでしょうか? この劇場の制約条件に合わせて演出するというのもひとつの解決策だと思います。
とは言っても、前明かりの届きづらい舞台後方を何とか明るくする術はいろいろあるはずで、簡単なところだとSSを弱く入れてあげることでカバーする方法など考えつきます。
基本仕込みにはない特殊な明かりをいくつもいれていましたが、やることが多すぎてひとつひとつが中途半端になった感も否めません。(いや、高校演劇の短い仕込み時間でここまでやるのはかなりすごいんですが。)
灯入れで8つの明かりが円形の周りに置かれていましたが、あれはバランスとして眩しすぎじゃないかとか、プロサスから当てた客席向けの明かりがフレネルで明かり漏れ過ぎとか、下手からのイエローを入れていたSSのネライが合ってないんじゃないか(黒パンチの敷かれていない部分は床ギライでシュートしたほうが演出意図に沿うのではないか?)とか、ソースフォー(RIKURIかな?)でつくった四角い明かりは劇的なんだけど明かりの当たっていない部分の美しさも考慮してほしいな、とか、たくさんチャレンジをしているが故に思うところがありました。
どのように明かり作りを行っているのか分かりませんが、もし調光室からの視点で作ったのなら、今後は照明チーフは客席に降りて作ったほうが良いと思います。これだけの舞台なので、調光室と客席で見る明かりはかなり違います。調光室にオペレーターを一人置き、チーフが客席に立ち、ガナリか何かでどのフェーダーをどれぐらいのゲージにするか、役者を実際に舞台に立たせながら丁寧に明かりを作ることをお勧めします。
リハーサルでそんな時間をとるのは大変かもしれませんが...。照明はじめスタッフワークはかなり頑張っていたので応援したくなりました。


●白根高校「南アルプスの少女、イワケン演劇部やろうよ編」

いいボリュームの音楽に乗せて幕あき。舞台セットはなかなかセンスのある配置で、上手奥に大きな木、その前方に台、下手前方にも台を置きつつ障子をうまく傾斜させていました。こういった配置は簡単に出来そうだけどセンスが要るものです。
木は登れるようになっていて、登り切ったところに役者が座るとそこを狙った単サスが入り、さりげなく顔をフォローするといういい使い方をしていました。タッパのある装置だと、基本仕込みでは顔がとれないこともままあるので、こういう気遣いは大切です。
暗転のときにはその木に斜めからやはり単サスで明かりが差し込むようになっており、暗転にメリハリをつける素敵な演出に貢献していたと思います。下手に隠していたプロジェクターの明かり漏れがどうしても見えてしまう暗転だったのですが、木に明かりを当てておいてある意味完全暗転出来ないところをごまかそうというのもひとつの考えですね。
スタッフワークは全体的にこなれていて、音の使い方もよく練られており、たとえば時計がチクタク鳴りつつ台詞を伸ばし、音のボリュームやSEの挿入のタイミングと明かりの変化を同時に行うなど、アイデアが必要な演出が随所に見られました。特に小道具で出てきた起き上がりこぶしの使い方など非常に効果的で考えられているなと思いました。


●山梨高校「夏芙蓉」

教室の舞台セットで、夜のシーンということで前明かりもなくブルーの地のサスで薄暗く染めている状態から幕あき。教室の明かりがつけられると、地明かりになりましたが、前明かりはおそらくフロントに頼っていてシーリングはほぼ使っていない様子でした。夜の雰囲気を出したかったのでしょうか、フロントだけを前明かりにすれば舞台装置や役者の陰影が斜めにはっきり出ますから、ひとつ効果的な方法でした。ただ、フロントだけに頼ったが故に、あまり袖に近いところに役者が移動すると顔がとれないというようなこともありました。フロントだけを使うなら、その明かりでカバーできる範囲がどこからどこまでか考えたうえでアクティングエリアを決められると良いと思います。特にこのセットであれば、そこまで袖幕(上手)に寄らずに済むお芝居が出来たんじゃないかなと思います。もちろん、アクティングエリアはそのままに、照明を一工夫して顔をとるというのもありです。
台本を大幅に変更し、死んでしまった人物たちがハケるシーンがあったのですが、そのときには上手からSSを照射し、その明かりにむかってハケていくというような演出がありました。その影がうまく反対側下手のパネルにあたって、印象的なシーンができていたと思います。
舞台セットは下手のパネル裏が微妙に見切れていて、人形立てや出ハケが見えるという状態だったので、ここはしっかり作りこむか、袖幕を狭めてあげたほうがいいでしょう。


ということで、いろいろ書きましたけどとても楽しくお芝居を拝見できました。
山梨の演劇部の皆さん、おつかれさまでした!

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