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2013年8月 7日
全国大会観照記 長崎大会二日目

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例によって全国大会(第59回全国高等学校演劇大会)に行ってきました。私は2、3日目を見に行ってきたのでその照明のレビューを書いてみたいと思います。

長崎市公会堂は、市内の方にお話をうかがったところ、戦後すぐに復興の象徴のような形で建てられたとのことですので、ずいぶん古い建物です。劇場機構はもちろん当時から改修はされていますが、それでも古かったです。照明は丸茂のサイトに少しデータが載っています。こちらです
ここに写真も載っていますが、フロントが無いため仮設で設置していたり、いろいろ大変な環境です。
SUSバトンは2本しかないため、あとはボーダーにボーダーハンガーか何かで吊っているものと、美術バトンに立ちあげ(?)しているものもあったようです。


2013/8/3、長崎県長崎市の長崎市公会堂にて。


●広島市立沼田高等学校「うしろのしょうめんだあれ」

舞台中央にエリア明かりをつくり、そこを演技の中心として芝居が進んでいました。その周囲には椅子があり役者も座っているのですが、その役者たちは演技の中心ではないため敢えてそこには明かりを当てずハレーションで済ませていました。地明かりのサスはバトンひとつにつきストレート5灯あったと思いますが、そのうち真ん中3灯をメインに使うという明かりですね。
ただ残念ながら、その明かりの端に役者が立つと、顔が見えづらくなってしまうシーンもありました。前明かりのネライの関係ですね。今後は、サスで照らされているからといってあまり端に行きすぎる演技は控えたほうが良さそうです。

場面転換で使っていたSSは面白かったですね。椅子にくっついている棒の上部だけをねらってシュートしていたので、場面転換中はその棒ないしは役者の頭部分だけが浮かび上がる効果がありました。


●大阪市立鶴見商業高等学校「ROCK U!」

沼田高校との比較でSSの使い方でいうと、例えば「殴る」シーンのときに、SSの明かりがついてはいるもののちゃんと役者をねらえてないので、もっと劇的になるはずなのにもったいなく終わってしまいました。
また、冒頭のシーンで使ったセンター奥の単サスは、ちょうどパネル手前で使っていたということもありますが汚く明かりがでてしまっていました。これは多分にここの灯体のせいでもありますが、国立劇場で上演するときにはきっとプロの手が入ってもっときれいになることでしょう。
SSで上下2灯ずつ煽るシーンがありましたが(上手ツラがオレンジ、オクがピンク、下手ツラがグリーン、オクがブルー)、下手奥のブルーだけ光が弱く感じてしまいましたね。これは、ふつうの灯体だと演色性の関係で青色のカラーフィルターを使うと青色があんまり目に見えないのです。なので、青色を入れた灯体だけ少しゲージを強くするなど工夫してみるのもありです。


●高田高等学校「マスク」

冒頭だいぶオペミスがあったようで、残念でした。フェーダーを返すシーンを間違えて暗転しちゃったあわわわわ、という感じでしょうか。これはどんな大会でも練習あるのみですね。プリセットでシーンをつくって、クロスフェーダーで返していたのではないかと推測するのですが、同じ状況を紙の上ででもつくってみてひたすら練習しましょう。そうすれば本番も落ち着いて操作できます。
そのオペミス中にミラーボールシーンがありましたが、ミラーボールへの明かりはSSから当てていました。


●東京都立東高等学校 「桶屋はどうなる」

LEDの灯体を6灯使っていました。LED Parでしょうか。舞台奥のほうのバトンから、舞台ツラに向けてバックサス気味に入れていましたね。一日目に他の学校もこのLEDは一瞬使ってたらしいので、東高校が持ち込んだのかどうなのか分かりませんが、それにしても全国大会でLEDが使われるのは初めてなんじゃないかと思います。
LED機材を使うためには、DMXの線を引きまわさないといけないわけで、DMXの線が常設でバトンから調光室まで伸びてていればいいですが伸びてないときは大変です。ワイヤレスで飛ばすか、ケーブルをひたすら引き回さないといけません。今回はどうだったんでしょうか。
東高校は、LEDを使って色のチェイスをしていました。チカチカと一定間隔で色を変えるというアレです。
役者が2人だけで演じるということもあってか、少し袖幕を狭めて舞台を使っていました。広すぎる空間を使いすぎず、いいですね。
ラストは、舞台奥にあるゴミ袋の山をパーライトの強い光で照らしていました。一番奥のバトンからの明かりなので、ゴミ袋の陰影もでるし、パーライトの白い光だから象徴的だし、本当にシンプルだけどとてもいい明かりです。この絵は、見る者をハッとさせるたいへん劇的なシーンに仕上がっていたと思います。


●徳島県立城ノ内高等学校「三歳からのアポトーシス」

さまざまな印象的な明かりを作っていましたので、絵だけ見ればとてもかっこいいシーンの連続でした。スモークを焚いてソースフォーやパーライトでビームをつくり、かっこいいなーと思わせるわけです。
しかし、とんでもなく顔が見えない明かりでした。美しいシーン、かっこいいシーンを作るのは結構ですが、芝居の筋が分からなくなるほど顔が見えない明かりを作るのは本末転倒ではないでしょうか。プランもそうですが、なぜか顔にネライが向いていないSSだとか、(演出の問題もありますが)観客の位置によってはまったく顔の見えない場に役者を固定させてしまうようなシーンがあり、この広い劇場空間に対応しきれなかったのではないかと思います。
そして細かいことでいろいろな意見があって然るべきですが、#22を多用していた件について。同じ#22をあれだけ使う前に、同系色の別の色や補完する色を使って立体感を持たせてもよかったかなと思います。ソースフォーで#22を使っているなか、1キロのパーライトでもおなじ#22を入れると妙に浮くんですよね。かっこいい明かりを作るなら、徹底的に追及してほしいものです。


3日目のレビューはまたあとで。

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